2013年01月18日

第9地区第9地区』

予想通りにはいかない展開の連続. 大筋ではセオリー通りの展開なのに、転換点は全て観客の予想を裏切るというこの脚本の巧さに思わず唸ってしまう映画でした. あえてアメリカではなく南アフリカを舞台にすることで、人間のエイリアンに対する差別をアパルトヘイトとリンクさせることで見せきったこの映画は今年最高の一本に数えられること間違いなしだと思います. ヨハネスブルクの上空に20年間も停滞したままの巨大な宇宙船. その下に広がるエイリアンたちがスラム化し、ナイジェリア人ギャングがエイリアンに猫缶詐欺を働く無法地帯・第9地区. そんな場所からエイリアンたちを退去させる任務を負ったMNU職員ヴィカス. まずこの彼が本当に「どこにでもいる普通のいい兄ちゃん」であることがこの映画の一番のミソなんですよね. というのもこのヴィカスが慈善活動をしていたり、義父やクーバス大佐のような私利私欲に汚れた男なら、恐らくこの映画の雰囲気はフィクションという範疇から抜け出すことはできなかったでしょう. でも彼が「どこにでもいる普通の男」だからこそ、また前半にたくさんのモキュメンタリー映像が効果的に使われているからこそ、そしてエイリアンへの差別をアパルトヘイトとリンクさせているからこそ、この映画はフィクションなのに物凄いリアルっぽさを感じるんです. 特に 『エイリアンvs.プレデター』 が如くヴィカスとクリストファー・ジョンソンが共同戦線を張った後で、治療に3年掛かると聞いた途端にヴィカスの中で差別心が良心に牙を剥きクリストファーを殴り倒すくだりや、 『エイリアン2』 というよりは 『APPLESEED』 を彷彿とさせるランドメイドに搭乗したヴィカスが一度はクリストファーを見捨てるくだりなどは、まさに奇麗事など並べていられない、人間は誰しも自分とは違う種別を見下している生き物であると言わんばかり. その一方でヴィカスの中で今度は良心が差別心に牙を剥きクリストファーを助けに戻るくだりには、感涙してしまいそうなくらいに溢れんばかりの友情という名の愛が詰まっているんですよね. そう、 『ザ・フライ』 で見たベロニカがセスに向けた「どんなに姿形が違ってもあなたを守りたい」という想いと同じ愛が. これが本当に心にグッっとくるんです. さらにクリストファーのヴィカスへの申し訳ない気持ちでいっぱいの表情と、ヴィカスのクリストファーの帰還と妻タニアへの愛を信じ僅かな希望にすがる表情で終わるあのラストが本当に切ないこと. しかもここでも再びインタビュー形式で見せるヴィカス関係者たちのモキュメンタリー映像が「これはエイリアンへの差別を描いているが本当はアパルトヘイトを始めとする全ての差別を描いているんだ」と言っているかのようで、正直 『マンデラの名もなき看守』 などの映画よりも強烈なものを感じる映画でしたよ. とにかくギャング団やスラム化するエイリアンたちなど前半に張られた複数の伏線が、後半に奇麗事を並べたフィクション作品に慣れた観客の予想を裏切るかのように回収されていくこの映画. オスカー4部門で無冠というのが凄く惜しい! と思える異色の衝撃作だと思いました. 深夜らじお@の映画館 も昔一度だけ猫缶に挑戦しようとしたことがあります.
posted by TamuraKarin at 06:53| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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